「不老不死の果実」と言われることもあるぐらい、栄養価が豊富なことで知られるイチジク。
新鮮なイチジクは特においしいため、家で育ててみたいという方も多いのではないでしょうか。
イチジクは家庭で育てるのに最適な果樹の一つです。
方法をご紹介します。
ここでは、イチジクの栽培を始めてみたい方に、初めての方でも失敗することなく、美味しいイチジクを収穫できる栽培方法の概要や必要となるものについて解説していきます。
科名 | クワ科イチジク属 |
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別名 | 南蛮柿 唐柿など |
原産地 | アラビア南部 |
分類 | 落葉高木 |
耐暑性 | 強い |
- 半日程度は日が当たる、日当たりの良い場所で育てる(ただし真夏の西日には注意する)
- 耐寒性がやや低いため、暖かい地域以外では耐寒性の強い品種を選んで育てる
- 品種に応じた方法で剪定作業を行う
- 果実は傷みやすいので収穫時期を逃さないようにする
- 追肥は冬・夏・秋の年3回行う
家庭菜園でイチジクを育てるコツ
イチジクの栽培は、日当たりの良い場所と水はけの良い土壌が重要です。
また、適度な剪定や定期的な水やりが必要です。
これらのポイントを守ることで、イチジクの木は元気に育ち、豊かな実をつけます。
耐寒性の強い品種を選ぶ
イチジクは本来は寒さにあまり強くないですが、品種改良の成果もあって日本の冬を越すことができるものも多数存在します。
暖かい地域以外では、念のため耐寒性のある品種かどうか確認してから購入すると良いです。
最初は日本で主に流通している「ドーフィン」「蓬莱柿(ほうらいし)」といった品種であれば、日本の気候に適応できるため、よくわからない場合はこれらの品種から始めると良いです。
適切に剪定を行う
イチジクは放置していると自由に枝が育ってしまい収穫がしにくくなる等の問題があるため、毎年剪定を行う必要があります。
イチジクは夏果用の品種と秋果用の品種によって剪定の方法が異なります。剪定の仕方を間違えるとうまく実がならないケースもありますので、注意が必要です。
イチジクの葉に触れただけでかぶれる!注意が必要な理由と対策
イチジクの木から出る樹液に触れると、樹液に含まれるたんぱく質分解酵素の刺激によってかぶれてしまう場合があります。
収穫の際や剪定の際等においては、直接木を切り取るため樹液が出てきます。そういった際は、樹液になるべく触れないよう注意して作業を行うと良いです。
また樹液に比べると頻度は低いですが、イチジクの葉に触れただけでもかぶれてしまう場合もあります。
特にかぶれやすい体質の方は、手袋等をして作業するようにしてください。
イチジク栽培のプロが選ぶ!これだけは絶対に必要なアイテム
イチジクを栽培するためには、絶対に必要なアイテムをご紹介します。
イチジク栽培のプロが厳選したアイテムで、初心者でも簡単に始めることができます。
肥料や土壌改良剤も使用することで、イチジクの成長を促すことができます。
イチジクの栽培を始めるうえで用意すべき主なものは以下の通りです。
鉢で育てる場合
- 大型の鉢
- 果樹用の培養土
- 鉢底石or鉢底ネット
- イチジクの苗
- 剪定ハサミ
- 追肥用肥料
地植えで育てる場合
- 腐葉土や元肥、石灰
- イチジクの苗
- 剪定ハサミ
- 追肥用肥料
- スコップ
イチジクの栽培を始めるなら、苗から始めよう!効果的な育て方と栽培のポイント
イチジクの栽培を始めたい場合、苗から始めるのが一般的です。
日本に出回っているイチジクの中の種はたいてい受粉がされておらず、播いても発芽しません。
そのため、新たにイチジクを育てる場合は苗を購入して育てるのが基本です。
既に苗を持っている場合は、挿し木をすることでふやすことができます。
イチジクの植え付け時期
イチジクの苗の植え付け時期は11~翌3月ごろです。
寒い地域では冬に植えると凍害が起こる場合があるため、春に植えるのが良いです。
イチジクの収穫時期
イチジクの収穫時期は6~10月頃で、品種によって収穫時期は多少前後します。
イチジクの品種は、収穫時期によって以下の3つに分けることができます。
- 夏果専用品種(夏に収穫)
- 秋果専用品種(秋に収穫)
- 夏果・秋果兼用品種(夏から秋にかけて収穫)
この中でも兼用品種は長く収穫を楽しめることで知られます。
実際に栽培を始める際には、購入する品種がどれに該当するか、確認しておいてください。
どのタイプの品種かによって、選定の方法などに違いがあるためです。
イチジク栽培のポイント!日当たりと風通しを考慮しよう
イチジク栽培には日当たり・風通しの良い場所が適しています。
イチジクは耐陰性があり、日陰でもイチジクの木自体は育ちますが、日陰だとうまく実がならかったり、なってもあまり美味しい実ができないことが多いです。
最低限半日程度は日照時間を確保できる、日当たりの良い場所で育てるようにしてください。
ただし、真夏の西日のような強い直射日光はやや苦手なので、真夏は半日蔭のような場所で育てるのがベストとされます。
イチジクの最適土壌pHは6.5~7.0程度で、酸性土壌を嫌います。
そのため、地植えする場合は石灰を施し、土壌を中性に傾けましょう。
また、酸性土壌を好むブルーベリーのような植物と同じ場所に植えるのは避けてください。
イチジクの生育適温
イチジクの生育適温は15~30℃程度で、耐暑性は強く日本の夏でも栽培が可能です。
耐寒性はやや弱いとされますが、品種によっては寒冷地でも育てること自体は可能です。
耐寒性 | やや弱い |
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耐暑性 | 強い |
好適土壌pH | 6.0~7.0 |
イチジクの鉢植え方法!初心者でも簡単にできる育て方
イチジクは10号鉢程度の大きな鉢を用意すれば、鉢植えで育てることもできます。
鉢植えの場合、どうしても地植えの場合と比べると株の大きさは小さくなる傾向にあります。
イチジクの鉢植えに最適な用土は?市販の培養土を使えば簡単便利!
イチジクの鉢植えの際の用土は、ホームセンターや園芸店などで販売されている市販の果樹用の用土を使用すればOKです。
市販の培養土であれば、既に植物が育ちやすいよう配合されているため、そのまま使うことができ便利です。
自分で用土を作る場合は、赤玉土と腐葉土を7:3程度に配合したものを使うと良いです。
イチジクの育成法!鉢底石と培養土のポイントを伝授
用意した鉢に、鉢底石または鉢底ネットを敷きます。
その後、ポットを鉢の中に入れたときに、根元の部分が八より少し低くなる程度にまで、用意した培養土を投入します。
その後ポットからイチジク苗を取り出して置き、残りの部分に培養土を入れて隙間がない状態にすれば、植え付けは終わりです。
イチジクの鉢植え水やりのポイント!土表面が乾いたら水を与える
鉢植えの場合は土表面が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。
イチジクはどちらかというと乾燥気味の環境を好みますが、水切れが起きると生育に影響が出るため、水やりを忘れないようにしてください。
イチジクの地植えってどうするの?失敗しない方法を伝授!
イチジクの地植え方法をご紹介します。
イチジクは暖かい気候が好きな植物で、日当たりの良い場所が最適です。
土の準備から苗の植え付けまで、手順を順に進めていきましょう。
イチジクの地植え!酸性土壌を中和して健康な木を育てよう!
イチジクは酸性土壌を嫌うので、2週間ほど前に事前に石灰を施して中性に近づけておきます。
腐葉土、元肥を入れて深く穴を掘り耕せば、土の準備は完了です。
イチジクを地植えで育てる!成功する植え付けのポイントとは?
植え付ける場所にポットの大きさより少し大きい程度の穴をあけ、ポットから丁寧に苗を取り出して穴の中に入れて植え付けを行います。
他の植物と植え付け方法自体に大きな違いはありません。
地植えのイチジクに必要な水やりのポイント
地植えの場合は基本的に水やりは必要ありません。
雨が降らず乾燥が酷い(特に夏場)といった場合は様子を見ながら水やりを行うと良いです。
イチジクの追肥で豊かな収穫!初心者でも簡単に実る方法
イチジクの収穫を豊かにする方法は、追肥です。
初心者の方でも簡単に実をつけることができます。
イチジクは栄養をたくさん必要とする植物ですので、追肥をすることで十分な栄養を供給することができます。
また、追肥によって土壌のpH値を調整することもでき、イチジクの成長にとってとても重要な要素です。
イチジクの追肥は年に3回行い、それぞれの時期は以下の通りです。
- 夏(6~8月ごろ)
- 秋(9~10月ごろ)
- 冬(12~2月ごろ)
夏に与える肥料は、これから収穫を迎えるという時期であり、果実の肥大や枝の充実が主な目的です。
秋の肥料はいわゆる礼肥で、収穫後に株を回復させる目的で施肥をします。
冬にやる肥料は効果が持続する緩効性の肥料を与えると良いとされます。
失敗しないイチジク剪定のポイント!夏果と秋果の違いを知ろう
イチジク栽培において重要になる管理作業が「剪定」です。
イチジクの品種は3種類に分けられ、夏に実をつける「夏果専用品種」、秋に実をつける「秋果専用品種」、夏果秋果を両方収穫できる「夏果秋果兼用品種」の3つがあります。
イチジクは夏果と秋果で実の付き方が違うので、どのタイプの品種を育てているか(言い換えれば夏果と秋果のどちらを収穫するか)によって、剪定の方法が変わります。
実がつくところはある程度決まっているので、剪定の仕方を間違えると実がつかない場合もあるので注意が必要です。
剪定の際のキーワードは「1年枝」と「2年枝」で、簡単に言うと1年枝はその年に伸びた新しい枝、2年枝は伸びて2年目の枝です。1年枝は緑色を、2年枝は茶色をしていることで見分けます。
なおこれらの剪定は、時期としては12~4月頃に行います。
秋果を収穫する場合
秋果は夏果と違い、1年枝に果実がつきます。言い換えれば、その年に伸びた枝に実がつく性質があります。
秋果を収穫する場合の剪定は夏果を収穫する場合よりは分かりやすく、2年枝の芽を2~3個を残して、それより先を切っておきます。
そうすることでその芽の部分から新たな枝が生じ、その枝に実がなります。
夏果を収穫する場合
夏果は「果実は2年枝につく」という特徴があります。すなわち次の夏には前年に伸びた枝に実をつけます。厳密に言うとその年に伸びる1年枝にも実はつきますが、その実は通常大きくなりません。
秋果と同じ要領で剪定すると、実がつく部分が少なくなってしまうことになり、剪定の際は秋果の場合より芽を多く残しておく必要があります。具体的な数値で言うと、「5~8芽を残して剪定する」のが1つの目安です。
イチジクの仕立て方
イチジクの木の仕立て方は、主として以下の2パターンがあります。
- 2本の主枝を左右に分けて仕立てる「一文字仕立て」(左)
- 杯状に2本ずつ枝分かれさせていく「杯状仕立て」(右)
摘心も行うと良い
茎や枝の最先端の部分を摘み取ることを「摘心」といいます。
イチジクの実のうち、枝の先端の方にある小さな実は秋になっても大きくならず、未熟果のまま終わってしまうものがあります。
そのため、先端の方の茎や実は事前に摘心によって切り取ってあげることで、実の方により多くのエネルギーを集中させることができます。
そのため、実がある程度できてきたら(秋果の場合で7月下旬~8月ごろが目安)、摘心を行って小さい実ができているような先端部分は、枝ごと摘み取っておくと良いです。
イチジクの収穫方法
イチジクは果実の先が割れてきたころが収穫の目安で、収穫期を迎えたものからハサミで切って収穫します。
夏果は6月頃、秋果は8~9月頃からが収穫時期の目安で、株の下から順番に実が熟していきます。
イチジクは取り遅れるとカビが生えたり裂けたりする場合があり、とり遅れには注意しましょう。
また、イチジクの実は少し傷がついただけでも傷んでしまうことがあるので、傷をつけないように注意してください。
収穫時期を早める秘密のテクニック!果実を一気に成熟させるオイリングの効果とは?
果実を早く成熟させるには「オイリング」という作業が有効で、1週間程度収穫時期を早めることができるとされます。
果頂部が少し赤くなってきたころに、スポイト等を用いてオリーブ油などの植物油を果実の芽の部分に1~2滴ほどたらします。
こうすることで、早く成熟が進み、収穫も早くできるようになります。
イチジク栽培で注意したい病害虫
イチジクは果樹の中では比較的病害虫は発生しにくいため、比較的育てやすいとされます。
ただしカミキリムシなどの被害が発生する場合もあるので、ある程度は病害虫にも気を配っておくと良いです。
イチジクに発生する病害虫の一例としては以下のようなものがあります。
アザミウマ
アザミウマは細長い姿かたちをした小さな虫で、一見ひ弱に見えますが様々な農作物に被害を及ぼすことで知られる害虫です。
アザミウマはイチジクの実の内部を加害するため、一見すると異常がなくても内部で被害が生じている場合もあるため、農家の方も手を焼く厄介な害虫です。
発生すると果実の内部にアザミウマの成虫や幼虫が見られ、内部が腐敗するなどの被害が生じます。
被害を防ぐための方法としては、農薬を散布する方法もありますが、そのほか光反射シートの活用、除草をこまめにしておくといった方法があります。
カミキリムシ
イチジクにはカミキリムシも発生しやすいため、注意が必要です。
イチジクに実際に被害を与えるのは主に幼虫で、幼虫が木の内部に入り込み、食害して被害を与えます。
成虫のカミキリムシはイチジクの木に傷つけて卵を産み、孵化した幼虫が内部へと侵入して食い荒らします。
木の内部にいるため見つけるのが難しく、気づかぬ間に被害が大きくなる場合もあるため注意が必要です。
幹の根元におがくずのようなものが落ちていると、カミキリムシの幼虫が居る可能性が高いです。
カミキリムシには多数の種類がいますが、そのうち被害の多いのが「キボシカミキリ」というカミキリムシです。
そのほかゴマダラカミキリ、シロスジカミキリなどの種類も、被害を及ぼすことがあります。
なおカミキリムシの幼虫はテッポウムシと呼ばれることもあります。
疫病
葉や果実等に発生する病気で、果実に水浸状の病変ができたあと、白色のカビに覆われます。
多湿条件においては、果実が腐敗して落下してしまうこともあります。
葉に発生した場合は、葉に暗緑色の病斑ができ、枯死していきます。
梅雨の時期や9月頃に発生しやすく、イチジクに発生する代表的な病気の1つでもあるため注意が必要です。
知っておきたいイチジクの豆知識
イチジクはクワ科イチジク属に属する落葉高木で、漢字では「無花果」と書きます。
これは花を咲かせずに実をつけているように見えることに由来していますが、実際はイチジクも花を咲かせています。
イチジクの花は実の中において隠れて咲いており、花びら等はありません。
自然界においては、イチジクはイチジクコバチという蜂の仲間によって、受粉がなされます。
イチジクは旧約聖書のアダムとイブの話の中にも登場するなど歴史の古い作物で、原産地に近いメソポタミアでは6000年以上前から栽培されていたようです。
古代のエジプトや古代ローマ、ギリシャといった、古代世界における有名な国家でも栽培されていたとされています。
イチジクの種類
日本に流通しているイチジクは「桝井ドーフィン」という品種が一般的で、この品種が日本全体の流通量の8割ほどを占めます。
この品種は種苗業者であった桝井光次郎が日本に持ち込んで育苗し、日本に定着した品種です。
桝井ドーフィンに次ぐ生産量の品種は「蓬莱柿」というもので、こちらは日本において古くから栽培されてきた品種あるため「在来種」などと呼ばれます。
そのほかにもイチジクには多数の品種があり、海外産の白イチジクなどもあります。
イチジクの栄養
イチジクは「不老不死の果実」と言われることもあるぐらい、栄養価の高い果物として知られます。含まれる栄養素としては、以下のようなものがあります。
- カリウム
- 鉄
- ペクチン
- フィシン
イチジクには血圧を下げる効果があるカリウムや、貧血予防に働く鉄などの栄養素が豊富です。
ペクチンという食物繊維の一種には、整腸作用や悪玉コレステロールを低下される働きがあります。
また、イチジクの白い汁はフィシンというたんぱく質分解酵素で、これはたんぱく質の消化を助ける役割があります。
なおイチジクは栄養自体は豊富ですが、甘い果物であり食べ過ぎると糖分の摂りすぎになる可能性もあるため、その点は注意してください。
イチジクのスーパーでの価格
イチジクの価格は旬の時期で1パック400円程度で売られている事が多いです。
6月等の流通量が少ない頃だと、価格は600円前後と高くなる傾向にあります。
イチジクの保存方法
イチジクは輸送が難しい果物の代表格ともされていて、傷みやすいため保存には注意が必要です。
水分をふき取ってペーパータオルで包み、野菜室で保存しておけば2~3日程度保存ができます。
すぐに食べない場合は、冷凍しておくと良いです。
冷凍はそのまま保存袋に入れるか、皮をむいて刻んで保存袋に入れておきます。
刻んで保存袋に入れて冷凍しておけば、そのままジャムに使えて便利です。
未来農園では、冷凍イチジクを販売しています。